おにぎりは誰でも握れるけれど、本当においしい握り方って……? そこで、東京・浅草にある東京でいちばん古いおにぎり屋さん「おにぎり 浅草 宿六」の三代目店主・三浦洋介さんに、おいしいおにぎりの作り方をお聞きしました。ごはんの炊き方から、切り方、握り方、海苔の巻き方まで、プロのワザを参考に、“自分史上最高のおにぎり作り”にぜひチャレンジを!
おにぎりのおいしい握り方:Part1
■おいしいおにぎりのためのごはんの炊き方
── まず、ごはんを炊くときのポイントを教えてください。
はい。ごはんの炊き方には、大きく分けて3つのプロセスがあります。
1:研ぎの時間は短く!
これは好みの問題にもなってくるのですが、研ぎは極論をいえば、省いてもいいくらいです。研げば研ぐほどご飯の味はスッキリしますが、それでは海苔の味に負けてしまう。米らしい香りを残したほうが、おにぎりのバランスがよくなります。
ラーメン屋さんで麺をパパッと振って粉落としをするようなイメージで、サッと研ぐだけで十分です。私は、たらいに米を一升入れて、水を出しっ放しで10秒ほどかき混ぜたら、ザルにあげて水切りします。
2:ザルにあげて30分間の水切り
30分間という時間はあくまで目安ですが、米の表面が乾燥してくる状態まで水切りをします。この水切りには、賛否両論ありますが、私は大事なポイントにしています。
── 賛否両論といいますと?
水切りをすると、お米の表面が乾燥するので米が割れやすくなります。お米が傷つくと綺麗なおにぎりにはなりません。そのため、水切りをしないほうがよいという意見もあるのです。
── それなのに、水切りをするのはなぜですか?
お米全体の水分含有率のバランスを整えるためです。水切りをすることで、表面が乾燥し、芯の部分には水分がある状態になります。その状態から給水をすることで、米全体の水分量のバランスがよくなり、握ったときにも米粒がピンと立ったおいしいおにぎりができるのです。
── なるほど。でも米が割れてしまっては台無しですよね。
水切り後のお米の扱いを丁寧にすれば大丈夫です。釜の中に水を張っておき、そこに水切りしたお米をゆっくりと戻します。水がクッションの役目を果たし、釜にお米が当たって傷つくのを防ぎます。
3:1時間の給水をしてから炊飯
すべてのお米を釜に移したあとに、目盛りの位置まで水を足して1時間ほど置き、お米全体に水がほどよく入った状態で炊飯します。水はお釜の目盛りよりも気持ち少なめにして炊いたほうが、おにぎりを握りやすくなります。
★おいしいおにぎり作りと炊飯器には重要な関係があります!
おにぎりのおいしい握り方:Part2
■おいしいおにぎりを作るごはんの蒸らし方・切り方
おにぎりを作るごはんは「広いところで切る」
── 続いて、炊飯後の流れを教えてください。
土鍋の場合は炊き上がってからさらに20分くらい蒸らしますが、炊飯器の場合は蒸らしが終わった後に炊き上がりのアラームが鳴るはず。なので、ピピーッと音が鳴ったら、すぐに炊飯器を開けてお釜ごとごはんを取り出します。くれぐれもお釜の中にしゃもじを入れてごはんを切らない(ほぐさない)ように!
まな板のような平らなところ(100円ショップで買えるような、薄めのまな板が便利)にバサッとお釜からごはんを移せば、それでOK。寿司屋が飯を切るときも同じ方法です。決してお釜の中では切らず、寿司桶にお米を移してから切ります。広い空間にバサっと出して、またお釜に戻せば、余分な水分は切れ、ほぐしも完了です。
おにぎりのおいしい握り方:Part3
■おいしいおにぎりの握り方
塩は指3本ぶん。熱さに耐えて気合で握る!
── まずは塩の適量を教えてください。
手を少し湿らせて、指3本の腹につくくらいの塩を取ります。塩の量は手の大きさや味の好みで調整しますが、私の場合はこれくらいの量(ひとつまみ)で握ります。
少し塩が多めに見えるでしょうか? 塩は手になじむので、おにぎりにいく塩分はほどよく調整されます。
── ごはんは少し冷ましてから握りますか?
なるべく炊き上がりのごはんで握るといいでしょう。熱さに耐えて握るくらいがちょうどいい。おいしいおにぎりは「気合いと根性」です! とはいっても、一度お釜から出しているので、そこまで熱くはないと思います。もしも、冷めたごはんを握るときは、ひと肌くらいまで温めなおしてください。
── ごはんの適量を教えてください。
おにぎりを握るように手を三角形にしたとき、両手ですべてを包み込める量がベストです。おにぎりのすべての面にバランスよく力が届き、握る工程を最短にすることができます。

★おにぎりにデコレーションするデコテクはこちらで詳しく解説しています!
握る回数は3回。難しければ3の倍数で!
── 握るときの力のかけ具合や回数を詳しく教えてください。
三角形を作ろうとして握ると、どうしても力が入りすぎて米粒が潰れる上に、旨味が手の方に移ってしまいます。あくまでごはんをまとめるようなイメージで「手を抜いて握る」。
握る回数は3回。全部の角を1回ずつまとめる最小限の回数で仕上げます。もしも難しい場合は、3の倍数で増やしてください。4回、5回だと2片だけに力が入り、バランスが崩れます。あくまで均等に3の倍数で。ですが、6回だと手数が多すぎるので3回で終えたいですね。

低反発枕みたいなイメージですね。ゆっくりと米粒同士が近づいていくように。

米粒が潰れていないけれど、一つにまとまっている。この状態が完成です。
おにぎりのおいしい握り方:Part4
■おにぎりがおいしくなる海苔の巻き方
── いよいよ仕上げですね。おにぎりに合う海苔の選び方を教えてください。
高すぎず、安すぎず、中級品のものを選んでください。これは、バランスの問題ですね。最高級の海苔だと海苔の味が強すぎますし、安すぎる海苔は海苔の味がしないので、ごはんや具とのバランスが取れなくなります。
── 海苔の巻き方や量はどうでしょうか?
私は全形を縦半分にカットしたものを使います。理由はごはんが全部包み込まれるので、手に持ちやすいから。おにぎり全体に均等な力がかかり、崩れにくくなります。



■おいしいおにぎりを作る具材の選び方
── 最後に、おすすめの具材を教えてください。
醤油や味噌、塩味が強く濃いめの味を少量入れるのが握りやすくバランスも取りやすいと思います。油や水分の多いものはごはんが崩れやすくなるので避けたほうがいいでしょう。
とはいえ、基本的にはなんでも好きなものを入れればよいと思います。おにぎりは気張って食べるものじゃないので、気楽に楽しんでください。
★実はお米のチョイスも重要です。詳しくはこちら!
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一般社団法人おにぎり協会が認定する、おにぎり応援大使のメンバーである三浦さん。素手で握るおにぎりをたくさんの人に楽しんでもらいたいと言います。
「厳密にいえば、おにぎりの旨味を完全に逃がさないためには、ラップを使って握るのが一番いい。でも、それでは手で握り具合の感触がつかめなくなります。
素手で均等に力がかかるように、米粒を潰さずやさしく握ったおにぎりにかなうものはありません。日本のソウルフードであるおにぎりを、愛情込めて大切に握ってみてください」(三浦さん)。
浅草寺本堂の裏手にある昭和29年創業の老舗のおにぎり屋さん。大釜で炊かれたコシヒカリを香ばしい江戸前の海苔で包んだおにぎりは絶品。具(種)には日本各地から取り寄せた厳選素材が並ぶ。
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