結婚祝いや出産祝い、入学祝いなどを贈ったり、いただいたりした経験があっても、その礼儀作法に自信はありますか? お金のマナーはとても大切です。
「包む金額が適正でなく、相手に負担をかけた」
「お祝いをいただいたのに、お返しをしそびれた」
「ご祝儀袋の選び方が適しておらず、恥をかいた」
こうしたことがきっかけとなり、人間関係がぎくしゃくしたり、社会的信用を下げてしまったりする恐れもあります。そこで、顧客やママ友からお金のマナーに関する相談を受けることも多いという、ファイナンシャルプランナーの米澤典子さんに、冠婚葬祭にまつわる知っておきたいお金のマナーについて教えてもらいました。
Q1.お祝いやお悔やみに包む、適正な額はいくら?
お金を包むシーンでもっとも機会が多いのは、結婚や出産、入学などのお祝いごとですね。ほかには、新築祝いや長寿祝いなどがあります。対してお悔やみには、香典のほかに、法事の際にお渡しする御供物料(おくもつりょう)があります。それぞれの金額の相場は以下のとおりです。
◆包む金額の相場
【結婚祝い】
●単独で出席する場合
友人や同僚:3万円
親族:3万円〜5万円
きょうだい:3万円、5万円、10万円
●夫婦2人で出席する場合
友人、同僚、親族:5万円+1万円相当のプレゼント
きょうだい:10万円
●親族へ贈る場合
お祝いの金額は、年齢や地域などによっても違いがあるので、親族へ贈る場合、まず身内に相談したほうが安心です。また、結婚祝いの金額は「2で割れない数字」がよいとされていますが、二重の喜びと解釈できる2万円、10万円は決して失礼な金額ではありません。
●職場関係の方へ贈る場合
役職などで左右されますので、勤め先の基準を確認することを忘れずに。
なお、包むお金には新札を用意しましょう。また、会費制の結婚パーティに出席する場合は、会費+別途プレゼントを用意するのもおすすめです。その際は、相手が持ち帰るときに負担にならないようなものを選ぶか、日を改めて自宅に直接届くよう手配しましょう。
【出産祝い】
友人や同僚、仕事関係:5,000円〜1万円(ママ友などグループで贈る場合は、一人当たり1,000円~3,000円を出し合うことが多いようです)
きょうだい:1万円~3万円
●贈るタイミング
生後7日目の赤ちゃんの命名式「お七夜」後から、生後30日以内が目安とされています。出産がふたり目以降の場合は、すでに持っているベビーグッズと重ならないよう、ご本人の希望するものを聞いてみるのがおすすめです。
一般的に、オムツは喜ばれることが多いようで、最近はオムツで華やかなケーキを模した「オムツケーキ」が人気です。地域や職場の習慣によって、第2子以降の出産祝いはしないところもあるので、事前に傾向を確認してから対応しましょう。
【そのほかのお祝い】
●入学祝い
友人、知人のお子さん:3,000円~5,000円
親戚のお子さん:1万円
現金の代わりに、図書カードやQUOカードを贈るのもおすすめ。相手がこちらに気を遣ってしまう度合いも下がります。甥や姪であれば、外食やテーマパークに連れて行ってあげたり、いっしょにショッピングへ連れて行ったりして、欲しいものをプレゼントするというのも喜ばれそうです。
●新築祝い・長寿祝い
相手との関係性にもよりますが、相場は5,000円〜1万円程度。新築祝いなら、新居で使える器やグラス、祝杯になるワインなど、物品を贈るのもおすすめです。長寿祝いも、相手に喜ばれそうなお花やギフトを選びましょう。
【お悔やみ・お香典】
●親族の場合
会社など仕事関連:5,000円〜1万円
友人:5,000円〜1万円
近所の方・知人:3,000円~1万円
親族:1万円~10万円
宗教や地域による風習の違い、親族間での金額の調整など、さまざまな事情で金額に変動がありますので、事前に親族に相談してから決めるとよいでしょう。
また、法事の際にお渡しする「御供物料」は5,000円〜1万円が相場です。いずれも、不幸に対して前もって用意した印象を避けるため、古札で用意するのがマナーです。新札しかない場合は、2〜3回折り、折り目をつけてから包むようにしましょう。
Q2.お祝いや香典をいただいた場合の、お返しの相場は?

お返しの際は品物を贈ります。いただいた現金や物品価格に対し、およそ半額〜1/3相当の品物が目安になります。タオルや日用品、お菓子や保存できる食品などが定番です。最近はカタログギフトを贈ることで、相手に欲しい商品を選んでもらうのも定番になってきました。
お祝いのお返しを渡すタイミングは1カ月以内ですが、香典返しの場合、四十九日が過ぎた後「忌明け(きあけ、いみあけ)」以降に贈ります。葬儀の際に香典返しの辞退をされたり、一家の働き手を亡くされたりしたような場合は、香典返しの必要はありません。その場合も、あいさつ状は必ず出しましょう。
Q3.お金のやりとりで気をつけるべきことは?

お祝いは新札、お悔やみは古札を用意すること。そのほかには、水引の種類、お札の入れ方、封筒の書き方、包み方などに基本的なマナーがあります。
特に、仕事関係の相手に対してマナー違反をしてしまうと「細やかな気遣いができない人」という印象を与えてしまったり、相手が取引先の人であれば、今まで築いてきた信頼関係にヒビをいれてしまったりする恐れもあります。
金額に関しては、周囲より少なすぎて相手に不快な思いをさせることや、逆に、相手との関係性の割に多すぎる額を包んでしまい、お祝い返しで相手に負担をかけるようなことを避ける配慮が必要です。特に、贈る相手が取引先の場合は、必ず上司に相談することを忘れずに。
◆祝儀袋の作法
【水引の種類と使い分け】
水引とは、祝儀袋の飾りのこと。基本は5本の束ですが、大きな品や大事な贈り物の場合は、7本、9本と奇数で増えていきます。結婚祝いの場合は、「両家の結びつき」を表す意味で5本の束を二筋使い、10本にして使います。

結婚祝い:「結婚は1度きりのお祝い」という意味で「結び切り」タイプを選びます。

出産祝い・合格祝い:「何度でも結び直せる」という意味から、何度あってもうれしいような出産祝いや合格祝いのときは「蝶結び」の水引を使用します。
●祝儀袋の選び方
包む金額が1万円程度なら、水引が印刷されているものを。2万円〜3万円の場合は紅白タイプ、3万円以上は金銀タイプの水引が付いたご祝儀袋を選びます。
●祝儀袋への名前の書き方
祝儀袋の表面に書く名前は、毛筆を使ってフルネームを書きます。夫婦連名の場合は、夫の氏名の横に妻の名前だけを記入してもOK。会社関係などで2〜3名の連名にする場合は、右側から地位の高い順に名前を書きます。3名以上の連名は表面に書ききれないので、避けたほうが無難です。
●祝儀袋の裏側の畳み方
お祝い時は「慶び、幸せを受けるように」という意味を込め、下側が表面にくるよう上向きに。香典の場合は「悲しみを流す」という意味を込め、上側が表面にくるよう重ねます。逆にすると大変失礼にあたるので、式場で手渡す前に必ず、最終確認することを忘れずに。
また、祝儀袋をそのままバッグに入れると、汚れたり、折れ曲がったりする可能性があります。「ふくさ」または「ふくさばさみ」を用意しておきましょう。ふくさにご祝儀袋を入れる場合にも注意が必要です。慶び事の場合は右開きになるようにし、お悔やみ事の場合には左開きになるように入れましょう。
包む金額は、多くても少なくても失礼にあたります。冠婚葬祭に関わるお金や贈り物の目安を把握し、その都度、関わる方々への確認が大切です。いざというときこそ確認し、あわてないようにしましょう。
教えてくれた人
米澤典子さん
2000年にFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得。大学卒業後、大手経営コンサルタント会社にてセミナー講師等を務める。退職後、フリーランスのFPとして、個人向けの相談以外にも、ママや小学生向けのセミナーなどにも力を注ぐ。中学生の女の子と小学生の男の子のママ。
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