ニクイねぇ!調査隊

なぜ、イオンは朝採れ野菜を売り場に並べるのか?(前編)

文・写真/ニクイねぇ! PRESS編集部

2017.05.22

スーパーマーケットの「イオン」が、その日の早朝に採れた新鮮な朝採れ野菜を、お昼ごろまでに陳列して販売する“今朝採り野菜”と銘打った売り場を、2016年の春から展開しています。なぜイオンは、朝採れ野菜を販売し始めたのでしょうか? 売り場を企画した千葉泰彦さんに話を聞きました。

 

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イオンリテール株式会社
農産商品部 統括マネージャー
千葉泰彦さん

 

──まずは、なぜ“今朝採り野菜”を売り場の名称にしたのか教えてください。

この売り場をつくる前にお客さまにインタビューなどをした際、新鮮なイメージの言葉ってなんだろう? と聞いたところ、“朝採れ”=新鮮というイメージが強い、という結果が出たのです。そして現在、売り場では“朝採れ”という言葉ではなく、“今朝採り”という言葉を使っています。“朝採れ”というと、いつの朝かわかりませんが、“今朝”にすることで、今日の朝に採れた、という意味合いが強まりますからね。

今朝採れ野菜春日部店日

──お客さまの感性に訴えるフレーズだった、ということでしょうか?

あくまで科学的な根拠はありませんが、買う側と売る側とが共感できる言葉なのでしょうね。売り場としても、鮮度の高さをアピールでき、お客さまの購買意欲を高める手段のひとつとして使わせていただいております。

──いつ頃からこちらの売り場をつくる計画が持ち上がったのでしょうか?

実はアピールしていなかったものの、数年前からこの売り方自体はやっていたのです。今朝採った野菜を売り場に並べるには、まずは時間と距離の制約があります。当然、店舗に並ぶまでの距離と時間が短い方が、新鮮さを維持しやすいですよね。野菜はあくまで生き物ですから。

今朝採れなす 堺鉄砲町日

──では、なぜ今回、それをアピールするようになったのでしょうか?

タイミング的な話ですね。新鮮さ以外にも、地元で採れた野菜なら距離をあまり運ばずに売り場に並べられるので、CO2の削減にもつながりますから、環境にもいいというイメージがあります。環境に配慮することは、私ども販売サイドにとっても、お客さまにとっても、いい取り組みだと考えたからです。

──野菜はどのような仕組みで運ばれているのでしょうか?

グループ会社イオンアグリ創造が経営する直営農場が全国に21箇所あり、そこで畑を耕し、採れた野菜を、我々が販売するというスキームになっています。さらに、直営農場以外にも、それぞれの地元で採れるおいしい作物などを届けることも、並行して行っています。それぞれ専用車両で朝に巡回して収穫、1~3時間後には近隣の店舗を中心に、売り場に並べられるような仕組みです。

──お客さまの反応はどうですか?

おおむね好評だと思います。お客さまには、例えば“道の駅”などと同じように、鮮度がいいイメージを持たれていると思いますし、そういう売り場を目指しています。実際「農場から何キロ以内の店舗に今朝採り野菜の売り場をつくる」といった明確な規定は設けていませんが、近隣で営業している店舗に対し、午前中のなるべく早い時間に直接運び入れて販売する、という流れにしています。

今朝採れ野菜イオンスタイル板橋前野町火

──実際、どれくらいの数の店舗に今朝採り野菜売り場があるのでしょうか?

最初は数店舗で実現できればいいかなぁという感じでしたが、いまは2ケタの店舗に売り場が設けられています。春に採れるけど夏には採れない、秋には採れるけど冬には採れないなど、シーズンによって野菜のバリエーションが変わってくるので一概にはいえませんが、最大100店舗を超えたこともあります。

──現在、イオンは全国に何店舗くらいあるのでしょうか?

イオンリテールで管轄している店舗は400店舗ほどですね。

──今朝採り野菜売り場に関して、農場側からの反応はいかがでしたか?

これは、直営農場に限った話ではないですが、もともと農家の方のライフサイクルって、朝が早いんですよね。朝に収穫した方が高品質という作物を扱っているかどうかにもよりますが、一般的には、皆さん明け方から動き出し、作物を採るという方が多いので、朝早い分にはあまり負担にはなっていないようです。特に夏場だと、日中は暑くなりすぎるので、屋内での労働は適しませんから、朝に気温が低いうちに働く方が効率良く働けますよね。

──最初からみなさん、協力的だったのですね。

農場としては、なるべく良い状態でお客さまに作物を届けたいでしょうし、おいしく食べてもらうことが一番の喜びですからね。お客さまに「今朝採れたものを買って帰ったから、おいしく食べられた」といわれるのは、うれしいことなのです。

──つくり手からすると、最高の状態で食べてもらうというのは、うれしいですよね。

そうなんです。本来、お客さま自身が、つくられた農場に直接買い付けに行ければ一番良いのでしょうが、現実的には無理なわけです。実際には、お客さまが野菜を購入される場所はスーパーマーケットが約8割なので、スーパーマーケットは生産者とお客さまをいかにつなぐかが、販売のキーポイントになると思います。

兵庫三木里脇農場

──ちなみに、こういった取り組みはライバル店でも行われているのでしょうか?

正直、やろうと思えば、他のスーパーマーケットでもやれることですよね。物流自体はさほどハードルは高くありません。地方の「道の駅」なども基本的には同じです。ただし、多くのところがやろうとしても、朝に採れる作物の量は限られるわけですから、限られたパイの奪い合いになりますね。

──朝採れた野菜を専用車両で効率的に運んでいるとのことですが、店舗ごとのばらつきなど、調整はどうように行われているのでしょうか?

もちろん、天候などによってばらつきは出ますが、それは野菜を取り扱っている以上、特別なケースではありません。予定では100本採らなければならなかったのが、実際は雨で60本しか採れなかったとか、生育が悪く、25cmで採らなければならないものが15〜20cmで採らざるを得なかったとか、そういうケースがたびたびあるんです。でも店舗には、今朝採り野菜以外の売り場もあるため、他の売り場にその分多くの野菜を並べるなどして、お客さまのお買い物に支障が生じないよう、バイヤーが調整しています。

逆に、今日採らなければ成長しすぎて売れなくなる、といった理由で、予定より多く入荷することもありますが、それも「頑張って売りましょう」と、農場とコミュニケーションを取りながら、日々売り場をつくっています。

──LEDなどで野菜を育てる、管理農場などをつくる計画はないのでしょうか?

現在のところ、管理農場などをつくる予定はありません。ただし、通常の小さいビニールハウスではなく、もっと規模の大きい施設型農場を埼玉県久喜市につくります。トマト農場なのですが、国と県とイオンの3者でコンソーシアムをつくり、コンピュータで栽培の管理と生産調整を行って、この6月から実際に稼働します。

──現在、今朝採り野菜売り場で扱っている商品は、どのようなものなのでしょうか?

今の時期だと小松菜、水菜、白菜などがメインですね。さらに、葉物などがこれから入り始める頃でしょうか。春から夏にかけては、枝豆やほうれん草、チンゲンサイ、とうもろこし、レタスなどを扱います。また、イオン農場以外では、先日、いちごも扱いました。いちごは果物だと思われがちですが、本来は野菜なんですね。

今朝採れ野菜春日部店月

──いいものを並べましょう、ということで、フレキシブルに対応していかれるんですね。

急に良い野菜を仕入れられる、といったことも、店舗側と農場側とのコミュニケーション次第で実現できるんです。それだけの量が採れる予定なら、今朝採り野菜売り場にも置けるよね、といった具合に。お客さまにおいしいものを届けられると判断すれば、そのときそのときで臨機応変に対応していくということです。

──今朝採り野菜がきっかけとなり、新たな農家さんとのつながりができた、などの例はありますか?

もちろんあります。農家さんからは「イオンは大量に野菜を育てていないと取引できない」と思われている場合も多いのですが、実際は少しの量であったり、1週間しか採れないようなものでも、お客さまによろこんでもらえる作物でしたら、お取引が可能になっています。商売の裾野が広がっているのは間違いありませんね。生産者さまとのコミュニケーションで「こんな価値観だったら売れるよね」とひとつひとつ話し合いながら進めてきた結果です。

──「こんな価値観だったら〜」とはどういうことですか?

お客さまにとってみたら、同じ野菜だったら100円よりも1円安い99円で買えた方がいいですよね? でも、いつ採れたかわからない野菜よりも、今朝採れた野菜の方が、仮に20円高かったとしても、もしそこにお客さまが価値を見出していただけるのなら、生産者さんも収入が増えますし、みなさんそれぞれ努力をされます。結果として、よりいいものをお客さまが手に入れられる可能性が高まるんです。

 

後編へ続く http://www.nikuine-press.com/survey/post_4851/

 

イオンリテール http://www.aeonretail.jp/

 

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