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おいしさを追求したら“蒸気の出ない炊飯器”になった!? 世界初(※1)の「蒸気レス炊飯器」誕生秘話

文・写真/ニクイねぇ! PRESS編集部

2019.03.18

(※1)2009年2月1日発売 水冷式蒸気回収システムによる(三菱電機調べ)

炊飯器といえば、ごはんを炊いているときにモクモクと水蒸気を出しているシーンを想像しませんか?水蒸気を発するせいで置き場所を限定されやすく、場所によっては棚や壁が汚れたりフヤケたりしてしまいます。

ところが、数ある炊飯器の中には、水蒸気を発生させずにごはんを炊き上げる機能を備えた機種があります。三菱電機が開発した「蒸気レス」シリーズです。おいしさはもちろん、安全であることを目標に開発され、2009年の発売直後から大ヒットを記録。今でも、おいしいごはんを炊ける炊飯器として人気を得ています。そんな「蒸気レス」シリーズは、安全性に配慮しつつ、なぜおいしいごはんを炊けるのでしょうか?その秘密をひも解きます。

 

おいしく炊飯する条件とは「沸騰を継続させること」

今回お話を伺ったのは、長年、三菱電機で炊飯器の企画開発を担当している営業部の八百幸史晃さんです。そもそも“おいしいごはんを炊く”のに重要な要素とは何なのか?その条件から教えてもらいました。

「おいしいごはんを炊くためには、炊飯時に、高火力でいかに長く沸騰させられるか、が最も重要なポイントとなります。皆さん『はじめチョロチョロ中パッパ、赤子泣いてもふた取るな』という言葉を耳にされたことがあると思います。『はじめチョロチョロ』は、火を入れた初期段階は、弱火で鍋全体を温めてムラなくお米に水分を吸収させましょう、という意味。『中パッパ』は、強火で一気に沸騰させていく、ということなのです」(八百幸さん)

 


かまどで炊いたごはんがおいしい理由は、まさに高火力で炊飯されているから。さらに、沸騰後に薪を追加して沸騰させ続けるのも、おいしさの秘密。

 

でも例えば、一般的な鍋に水とお米を入れて沸騰させたらどうなるでしょう?ふたがガタゴトと音を立て、少しトロっとした煮汁が泡となって、ワァ〜っと上がって吹きこぼれてしまいますよね。この煮汁が、いわゆる“おねば”といわれるもので、ごはんのおいしさを左右する要素のひとつなのです。

「おねば」について
http://www.mitsubishielectric.co.jp/club-me/playback/jar_part2.html

とはいえ、おいしいごはんを炊くためには、その状態からさらに火力を上げ、沸騰させ続ける必要があります。しかし、これは難しいことで、ガスコンロで炊く場合など、吹きこぼれて、おねばが鍋の周りに垂れ、さらに火元に流れて火が消えてしまうことも。そのため、20年ほど前の炊飯器は、火力を弱くして沸騰させないようにし、おねばが吹きこぼれるのを防いでいました。つまり、おいしさの追求をある程度のところで諦めて、おねばの吹きこぼれ対策を行っていたのです。

「三菱電機が1999年に発売した『大沸騰』シリーズでは、釜から出たがっているおねばを、炊飯器の上部に設置した蒸気口を兼ねるカートリッジで受け止めることにしました。水蒸気はそのまま出ていき、おねばだけがカートリッジに残る仕組みです。これでふきこぼれを恐れることなく、ごはんを沸騰させて炊けるようになり、炊飯器でもごはんをおいしく炊けるようになったのです。これは、炊飯器の開発史上において、革新的なことだったと自負しています」(八百幸さん)

 

1999年8月に発売された三菱電機の「大沸騰」シリーズ(NJ-BE10)。本体上部にふきこぼれを受け止める「うまさカートリッジ」を搭載。強火で沸騰させて、ごはんを炊けるようになりました。

 

うま味成分が凝縮された“おねば”もムダにしません!

「大沸騰」シリーズは、おねばをカートリッジで受け止めるようにしていましたが、それだけだと水蒸気は炊飯器の外へどんどん吹き出していきます。そのため、吹きこぼれを完全にカットすることはできず、ある程度、火力の調整が必要でした。

先述したように、ごはんをおいしく炊くためには、「大火力で沸騰させ続けること」がとても重要です。その大火力を持続させるために、水蒸気をうまく処理する方法はないものか……?試行錯誤の末に導かれた答えが、「蒸気口をなくす」ことでした。そのために、おねばを受け止めるカートリッジを炊飯器内に内蔵し、同時に、蒸気を冷却して回収するタンクを組み込むことにしました。

 

こうして2009年に完成したのが「蒸気レス」シリーズです。


まずは、内蔵カートリッジで水蒸気とおねば=うま味を分離します。カートリッジの中は凸凹の構造になっていて、水蒸気よりも重いおねばは、カートリッジの最初の区画でほぼ止まるようになっています。

 

 

NJ-XS108Jはふたの部分にカートリッジを内蔵。おねばだけがカートリッジに残るよう、カートリッジ内部の構造が工夫されています。

 

このカートリッジは、同時に水蒸気を水タンクへと運ぶパイプの役割も果たします。熱い水蒸気は、本体前面の水タンクへと導かれ、水の中に放出されることで液化されるのです。

この機構によって、水蒸気がどれだけ出ようとも、炊飯器の内側に留めておけるようになったため、火力を弱める調整が不要となりました。そのため「蒸気レス」シリーズは、当社従来品よりも高火力で、より長く沸騰を継続させることができ、おいしいごはんを炊ける画期的な炊飯器となったのです。

 

 

炊飯中の釜から発生した水蒸気は、炊飯器前面にある水タンクへと導かれます。タンク内に入れた水には、水蒸気の泡が吹き出してきます。

 

さて、高火力でごはんを炊いている間、水蒸気は水タンクへと運ばれますが、カートリッジの初期段階で集めたうま味の元である、おねばは、どうなるのでしょうか? 前述したとおり、おねばには大事なうま味成分がたっぷりと入っています。その多くが、アミノ酸やグルタミン酸、アスパラギン酸など、お米の甘みやうま味を感じる元となる成分です。

 

「集められたおねばは、加熱がひと段落し、蒸らしの段階に入った時点で、ごはんの中にザザッという感じで戻されます。これにより、炊き上がったごはんのうま味成分は、それまでの約2倍となり、ごはん表層部分の還元糖量は約40%増加しました」(八百幸さん)

 

「蒸気レス」にした結果、おいしくごはんを炊くための必須条件である連続沸騰を実現しました。さらに、ごはんから一度出てしまったうま味成分のおねばを還元することで、より一層おいしいごはんを炊き上げられるようになったのです。

 

 

蒸気が出ないから清潔! 安全性も高い!!

水蒸気を外に出さない「蒸気レス」シリーズは、おいしさだけではなく、清潔で安全性に配慮している点も特長です。例えば、蒸気が外に吐き出される一般的な炊飯器では、炊飯中に室内の湿度を一気に高めてしまいます。炊飯器の置き場所によっては、棚や近くの壁を汚してしまうこともありますが、「蒸気レス」シリーズならそういった心配がありません。

 

 

炊飯中、炊飯器から水蒸気が出ないため、写真のように食器棚に付いた炊飯器用スペースに置いたまま、気兼ねなくごはんを炊けます。また、室内に水蒸気が出ないため結露などの抑制にも有効。

 

「『蒸気レス』シリーズは、数ある炊飯器の中でも、非常に安全性を重視して開発された製品です。蒸気=熱が炊飯器の外に出ないので、誤って高温の蒸気に触れる危険を防ぎます。また、炊飯中はふたを開けられないよう“チャイルドロック”もできるんです」(八百幸さん)

 


2019年、「蒸気レス」シリーズは誕生から10周年を迎えますが、現在、蒸気を外に出さない炊飯器はほかになく、三菱電機だけ(※2)の機能となっています。

(※2)2019年12月20日現在。国内市場におけるIHジャー炊飯器において

 

さらに八百幸さんによると、今後はおいしさはもちろんのこと、メンテナンスのしやすさなど、進化した「蒸気レス」に期待して欲しいとのこと。特に、炊飯器の置き場所に困っている人や、好奇心旺盛な子どものいたずらが心配な方などは、おいしさと利便性を兼ね備え、安全性にも配慮した「蒸気レス」シリーズを試してみてはいかがでしょう?

 

■三菱ジャー炊飯器 蒸気レスIH「備長炭 炭炊釜」

三菱ジャー炊飯器NJ-XS108Jシリーズのページです。蒸気も、うまみも逃さず、ふっくら炊き上げるタイプ。

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